倉田翠『今ここから、あなたのことが見える/見えない』

-大手町・丸の内・有楽町で働く人たちから立ち上がる“今ここから”-

就業人口約28万人、日本のGDP25%を占めるとも言う大手町・丸の内・有楽町エリア。この東京の中心で働く人たちは、いま何を考え、どのように生きているのでしょうか?

このエリアが「自分にとって最も遠い存在のひとつ」という本作演出の倉田翠は、創作ワークショップに取り組むにあたり、このエリアで働く30名以上のワーカーにインタビューを実施、この街と作品へのイメージを膨らませました。そして、公募から選ばれた10名、インタビューで出会った2名の計12名との約2ヶ月のワークショップを経て、有楽町のオフィスビルを”舞台”にしたパフォーマンスに挑みます。

出演者と倉田とのコミュニケーションによって育まれる関係性から一人ひとりの「生」を照らしだし、複雑で多様な人々の在りようを徹底的に肯定して描く本作は、観客と街にも新たな視点を共有することでしょう。

 

私たちの今日が、遠い海を越えて、あなたの明日になりますように。

有り余るエネルギーが行き場を見失い、こんなにも足りているのに手に入らず、大切にしまっておいた言葉はすっかり意味が抜け落ち、テニスの王子様を聖書がわりに胸に抱いて、手放したものを思い出し涙ぐみ、積み上がる前のプライドに抵抗し、どうせ届かないものを上手く伝えようとすることを諦め、言い出してしまったことを引っ込められず、逃亡する先はフィクションで、どんなに大切なものを失ったって大丈夫だと言えるほど自立して、声にすると震えて消えてしまうものを握りしめ、もう存在しないものの偉大さに恐縮し、そうして、私たちは明日も当たり前のように仕事に向かう。

ここに生きていることを、ここまで生きてきたことを、ただひたすらに肯定したい。 このささやかな悲しみと希望が、オフィスの間を潜り抜け、誰かの明日になりますように。
せめて、そう思いたい。

倉田 翠

 

 

【日時】
2022年5月22日(日)14:00開演/17:00開演

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